先日、飛行機内に装備しなければならない医療器具・薬品の一覧を見て驚いたのでメモしておきます。
航空機に装備しなければならない医薬品・資材
航空法施行規則第150条
飛行機の運航に当たっては航空法に諸々が定められています。そして、それを施行するに当たっての規則が別にあるのですが、救急用具の装備に関しては第百五十条がそれに該当します。
航空法施行規則第百五十条(総務省e-Govより)
いずれの航空機も、最低1つの救急箱を持っていてね、というものです。
中身
その中身については法令上は具体的なものはありません。まぁ法律ですからね。
なので、国土交通省が別にそれを定めています。
救急の用に供する医薬品及び医療用具について(国土交通省より、pdf)
pdfを参照出来ない方のために書き起こして表にしますね*1。
医薬品 | 剤形 | 一般名、含量等 | (参考)代表適応病態 | 医薬品名(例示) | 数量(国際) | 数量(国内) |
---|---|---|---|---|---|---|
点滴溶液 | 注射液 | 別表2に掲げられた点滴溶液から液量200ml以上のもの | ショック状態 | ソルラクトなど | 2 | 1 |
ブドウ糖溶液 | 注射液 | 20%ブドウ糖液20ml | 低血糖 | 糖液注 20%等 | 4 | 2 |
強心昇圧剤 | 注射液 | アドレナリン1mg | 心収縮力低下 | ボスミンなど | 4 | 2 |
副腎皮質ステロイド | 注射液 | ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム500mgなど | ショック状態 | 水溶性ハイドロコートン等 | 2 | 2 |
非麻薬性鎮痛剤 | 注射液 | ペンタゾシン15mg | 胸痛、胆石発作 | ソセゴンなど | 4 | 2 |
鎮静剤 | 注射液 | ジアゼパム10mg | 痙攣 | ホリゾンなど | 4 | 2 |
子宮収縮剤 | 注射液 | メチルエルゴメトリンマレイン酸塩0.2mgなど | 出産後出血 | メチルエルゴメトリンなど | 1 | |
利尿剤 | 注射液 | フロセミド20mg | 心不全 | ラシックスなど | 2 | |
抗ヒスタミン剤 | 錠剤 | d-クロルフェニラミンマレイン酸塩など | 蕁麻疹 | ポララミンなど | 10 | |
冠動脈拡張剤 | 錠剤 | ニトログリセリン0.3mg | 狭心症 | ニトログリセリンなど | 10 | 10 |
血圧降下剤 | カプセルまたは錠剤 | ニフェジピン10mgなど | 血圧上昇 | アダラートなど | 10 | 10 |
消毒薬 | 液 | 消毒用エタノールなど | なし | 消毒用エタノール | 1 | 1 |
消毒薬 | 液 | ベンザルコニウム塩化物など | なし | オスバンなど | 1 |
(薬品類)
医療用具 | 規格 | 数量(国際) | 数量(国内) |
---|---|---|---|
輸液セット | 2 | 1 | |
注射器 | 20ml,10ml,5ml | 各2 | 各2 |
注射器 | 2.5ml | 4 | 2 |
注射針 | 23G,21G | 各10 | 各10 |
翼状針 | 21G | 4 | 2 |
駆血帯 | 1 | 1 | |
エアウェイ | 大、中、小 | 各1 | |
バイトブロック | 中 | 1 | |
用手式蘇生バッグ | 1 | ||
用手式蘇生バッグ用マスク | 大、中 | 各1 | |
アンプルカット | 適宜 | 適宜 | |
ガーゼ | 適宜 | ||
絆創膏 | 適宜 | ||
カット綿 | 適宜 | 適宜 | |
消毒綿棒 | 大、中 | 各5 | |
血圧計 | 1 | 1 | |
聴診器 | 1 | 1 |
(資材類)
以上が、客席60以上の航空機が必ず装備しなければならないものになります。数量の空欄は装備が必須でないという意味。国内線は国際線よりも必須備品が少なくなっています。
これ以外に、装備を許可された医薬品・医療資材のリストも別にあるのですが、ここでは割愛。
感想
どういう状況を想定しているのかわかりませんが、本当の救急時にはその場凌ぎにもならないんじゃないかな、と言う気がします。
実際
国土交通省が定めているのはあくまで最小限の物品と、それに加える事が出来る物品です。各航空会社はそれぞれの考えのもと、実際に装備する内容を決める事が出来ます。
#俺たちのJAL
航空機内の搭載医療品・医薬品(快適な空の旅のために)- JAL
必須品以外にもドクターズキット、蘇生キットなどを揃えていそうです。
#あたいたちのANA
[おからだの不自由なかたへの空の旅へのお手伝い]サービス機器について|Service & Info|ANA
国内線ではレサシテーションキット(蘇生用具)は装備していないようです。
Solaseed Air(ソラシドエア/SNJ)、STARFLYER(スターフライヤー/SFJ)
AED(自動体外式除細動器)について|機内でのご注意|空港・機内サービス|ソラシドエア
航空会社スターフライヤー(SFJ)公式サイト/お手伝いが必要なお客様/ご高齢やおからだの不自由な方
AEDの搭載は明記しています。他の物品に関してはコメントがありません。
Skymark(スカイマーク/SKY)、AIR-DO(エアドゥ/ADO)、天草エアライン(AMX)、Peach Aviation(ピーチアビエーション/APJ)
AED含め、機内の医療資材の説明はweb上では見つけられませんでした。
まとめ
以上、飛行機内に必ず装備されている医療資材についてでした。
実際に装備されているものはこれよりも充実していると信じたいですね。
ちなみに、日本では『善きサマリア人の法』が制定されていません。
ここら辺の問題点については、医師でもある陸マイラーの方々が語られております。
医療者が守られない現状では、せめて装備くらいは整えておいてもらいたいものです。
*1:見やすくするために一部編集加えてます